こんにちはkentaroです。

お茶といえば「緑茶」「紅茶」「烏龍茶」などが思い浮かびますが、実は中国では発酵度の違いによっ て体系的に分類された「六大茶類」という考え方が あります。

これは、世界中のお茶の基本を理解するうえで欠かせない知識です。

この分類を知ることは、中国茶の奥深い世界への第一歩です。

本記事では、六大茶類それぞれの特徴・製法・代表 銘柄を、発酵度を軸に分かりやすく解説します。


六大茶類を分ける「発酵」という鍵

中国茶の分類は、主に茶葉に含まれる酵素(酸化酵素)を働かせるか否か、つまり「発酵(酸化)の程度」によって区別されます。

発酵が進むにつれて、茶葉の色は緑から赤褐色、そして黒へと変化し、味と香りの性質も劇的に変わっていきます。

茶類発酵度概略の製造工程特徴的な色
緑茶不発酵殺青(加熱)で酵素を止める
白茶軽発酵(微発酵)萎凋(乾燥)と乾燥のみ白(銀白色の産毛)
黄茶微発酵殺青後に「悶黄」(蒸し工程)を加える
青茶 (烏龍茶)半発酵萎凋、揺青(ようせい)、半発酵を制御青緑〜赤褐色
紅茶全発酵完全に発酵させる赤(茶葉は黒)
黒茶後発酵揉捻後に微生物による「積み上げ発酵」


1. 緑茶(りょくちゃ / Green Tea):不発酵の清々しさ

発酵度:不発酵

緑茶は、中国の茶葉生産量で最も多い茶類であり、日本で一般的に飲まれている煎茶と同じく「不発酵茶」に分類されます。

  • 製造のポイント: 摘み取った茶葉をすぐに高温で加熱する「殺青」(さっせい、Shāqīng)という工程で、茶葉内の酸化酵素の働きを止めます。これにより、茶葉が持つ本来の色と成分が保たれます。
  • 特徴: 「三緑」(乾いた茶葉の色、茶湯の色、淹れた後の茶葉の色が全て緑色)が特徴。清らかでさわやかな香りを持ち、茶葉本来のフレッシュで若々しい味わいが楽しめます。
  • 代表銘柄: 西湖龍井(せいこりゅうせい)、洞庭碧螺春(どうていへきらしゅん)、黄山毛峰(こうざんもうほう)。

2. 白茶(はくちゃ / White Tea):最も自然な製法

発酵度:軽発酵(微発酵)

白茶は、その名の通り、茶葉の表面に生える銀白色の産毛(白毫)を特徴とする、最も自然な製法で作られる希少なお茶です。

  • 製造のポイント: 摘採後の萎凋(自然乾燥)と文火烘乾(低温での乾燥)のみで、殺青や揉捻(揉む工程)をほとんど行いません。製法がシンプルゆえに、茶葉の品質がそのまま味に直結します。
  • 特徴: 外観は芽毫が完全で銀色の産毛に覆われ、香りは清らかで新鮮です。茶湯は淡い黄色がかった緑色で透明感があり、味わいは淡泊ながらも清涼感のある甘さが後に残ります。
  • 代表銘柄: 白毫銀針(はくごうぎんしん)、白牡丹(はくぼたん)、寿眉(じゅび)。

3. 黄茶(こうちゃ / Yellow Tea):中国固有の希少茶

発酵度:微発酵

黄茶は、中国固有の茶類で、生産量が非常に少なく、希少なお茶です。

緑茶に似た製法に、独自の工程が加わります。

  • 製造のポイント: 緑茶と同じく殺青を行った後、まだ温かいうちに布などで茶葉を包み、湿った熱で蒸し、黄変させる「悶黄」(もんおう、Mènhuáng)という工程を経ます。
  • 特徴: この悶黄により、茶葉と茶湯が美しい「黄色」に変化します。緑茶と比べて味がよりまろやかで優しく、甘く爽やかな風味と回甘(後から戻る甘さ)が生まれます。
  • 代表銘柄: 君山銀針(くんざんぎんしん)、霍山黄芽(かくざんこうが)、蒙頂黄芽(もちょうこうが)。

4. 青茶(せいう/烏龍茶 / Oolong Tea):半発酵が生む多様な香り

発酵度:半発酵

烏龍茶(Wūlóng Chá)は、中国語で「青茶」(Qīng Chá)とも呼ばれます。発酵の程度が非常に幅広く、その多様な香りが最大の魅力です。

  • 製造のポイント: 萎凋後、茶葉を軽く揺らして茶葉の縁を少し壊し、酵素の働きを促す「揺青」(ようせい、Zuòqīng)が重要な工程です。この半発酵の度合いをコントロールすることで、緑茶に近い清香から紅茶に近い熟果香まで、様々な香りが生まれます。
  • 特徴: 茶葉の縁が赤く、内側が緑色になる「緑葉紅鑲辺」(りょくようこうそうへん)と呼ばれる特徴的な外観を持ちます。緑茶の清らかさと紅茶のまろやかさの両方を兼ね備えた、華やかで奥深い味わいが魅力です。
  • 代表銘柄: 凍頂烏龍(とうちょうウーロン)、武夷岩茶(ぶいがんちゃ)、安渓鉄観音(あんけいてっかんのん)。

5. 紅茶(こうちゃ / Red Tea):完全発酵の芳醇さ

発酵度:全発酵

中国語の「紅茶」(Hóng Chá)は、英語圏の「Black Tea」(ブラックティー)に相当します。世界中で愛飲されている紅茶の原点であり、その発祥は福建省の武夷山一帯とされています。

  • 製造のポイント: 揉捻後に茶葉を完全に酸化(発酵)させます。この工程により、茶葉内の成分が大きく変化し、特有の芳醇な香りや甘さが生まれます。
  • 特徴: 乾いた茶葉は黒く油がのったような色合いですが、茶湯は鮮やかな赤色(紅)を呈し、葉底(茶殻)も赤くなります。長く続く甘い花や果実のような香りと、渋みが少なくまろやかな味わいが特徴です。
  • 代表銘柄: 祁門紅茶(きもんこうちゃ)、雲南省の滇紅(てんこう)、金駿眉(きんしゅんび)。

6. 黒茶(くろちゃ / Dark Tea):微生物の力が生む熟成美

発酵度:後発酵

中国語の「黒茶」(Hēi Chá)は、英語の「Dark Tea」(ダークティー)に相当します。製造過程で微生物の力を借りた「積み上げ発酵」(渥堆、Wòduī)を経るのが最大の特徴です。

  • 製造のポイント: 殺青、揉捻、乾燥の後、茶葉を積み重ねて湿らせ、微生物による発酵(後発酵)を促します。この工程は、茶葉を柔らかくし、独特の風味を生み出します。輸送の利便性から、多くが磚茶(たんちゃ/レンガ状)や沱茶(だちゃ/お椀状)などの緊圧茶に加工されます。
  • 特徴: 乾いた茶葉は黒く潤いがあり、茶湯は澄んだ琥珀色や橙色を呈します。香りはまろやかで、滋味は濃く熟成した風味があり、後に甘みが残ります。
  • 代表銘柄: 普洱茶(プーアルちゃ)、湖南省の安化黒茶(あんかこくちゃ)、広西の六堡茶(ろっぽうちゃ)。

中国茶の世界を楽しむために

中国の六大茶類は、それぞれ異なる加工技術と発酵度が、茶葉に無限の可能性をもたらすことを示しています。

この分類を知ることで、「このお茶は発酵度が低いからフレッシュなはずだ」「このお茶は後発酵だから熟成したまろやかさがあるはずだ」といった予想ができるようになり、中国茶のテイスティングが格段に面白くなります。

次は、あなたの好みのお茶を見つけるために、実際に六大茶類の飲み比べに挑戦してみてはいかがでしょうか?